「NPO法人を設立して福祉サービスをはじめた」とか「子供の健全育成のボランティアをやっていたが、この度ボランティア団体からNPO法人を設立した」などといった話を皆さんも聞いたことがあると思います。
会社でもない、ボランティア団体でもないNPO法人とはどんな法人なのでしょう。
私もNPO法人の話をしていると「売上げをあげてはいけないのですか」とか、「従業員に給料を支払ってはいけないのですか」といった質問を受けます。
上記の質問に対しての答えはいづれもNOです。NPOは売上を上げてもよいですし、従業員に給料を支払ってもよいです。私は「特定非営利活動法人」という正式名称から、ボランティア的なイメージを持つのではないかと思っています。
まずNPO法人がどんな法人なのかということを正しく理解しましょう。
NPO(Non‐Profit Organization)法人は正確には特定非営利活動法人と言います。特定非営利活動促進法(NPO法)という法律によって定義されています。
そしてこの法律にNPO法人を設立して主たる目的として行うことができる活動が定められています。NPO法人の活動できる種類は17種類あります。この活動のことを特定非営利活動といいます。
この17種類ですが、福祉の増進やまちづくりや子供も健全育成活動、環境保全活動、経済活動の活性化を図る活動などです。簡単に言うと、世の中の役に立つとか社会貢献になるといった活動をNPO法人が行える活動としています。
つまりNPO法人は、会社のように純粋な営利目的ではなく、世のため、社会のためになる活動をメインに行うことを目的とした法人ということができます。そして、会社組織のように資本金や登記手数料なしで設立できる点に最大の特徴があります。
NPO法人ができる前は、世のため人のためになる活動は、そもそもお金を稼ぐことが目的ではないので、ボランティア団体や自主的な団体、あるいは企業が社会貢献活動の一環として行ってきました。
しかし世のため、人のためになる活動といえども事業を運営するためにはお金がかかります。いままではそのお金を寄付でまかなったり、自腹で行ってきました。
しかし、それだけに頼っていてはなかなか厳しいものがあります。もっと充実した活動を行いたくても資金が無いため、寄付などがない限り、最低限の活動しか出来なかったというのが現実でした。
やはり何かを行うためにはそのためのお金が必要であり、その活動を行うための資金は自分達で稼いでいけないと、継続して活動を行っていくのは難しいです。
そこで、世のため人のためになる活動を行う継続して行うことを主な目的とするのであるが、その活動費用や運営費用、あるいはその活動を行った人に対して給料を自分たちで賄っていける法人が必要であろうということで、NPO法人という新しい法人ができました。
NPOは「売上をあげてはいけない」と思っていらっしゃる方もいると思うのですが、それは違います。
NPO法人は特定非営利活動法人と言いますが、この「非営利」の意味は団体の利益を構成員に分配しないことをいいます。例えば株式会社は利益を株主に配当という形で分配しますが、このような構成員に対する利益の分配をしてはいけないということです。
NPOに置き換えていえば、収益活動などで得た利益を社員や理事などに配当金のように分配せず、次の活動の資金にすることを意味します。
よく間違えられる「売上をあげてはいけない」というのは、「無償」(お金をもらわないこと)と非営利を混同しているためだと思います。
NPO法は、「非営利」と言っていますが、「無償」とは一言もいっていません。ですから、収益をあげてもよいし、その収益から活動を支えている人に給料をはらってもよいのです。
働いた人にその分だけ給料を払うことは、構成員に分配することとは違います。
NPO法人というのは、簡単に言うと、「世のため人のためになる活動を主たる活動として行う法人といいました」が、具体的にはどういう活動を行うために設立するのでしょうか?
世の中ため人のためになる活動というのは、特定非営利活動とよばれる17分野の活動のどれかに該当するものと定義されています。
つまり17分野の活動のうちどれかを行うという目的であれば、NPO法人を設立できるわけです。以下17分野と具体的例を記載しておきます。
【具体例】 介護事業(介護保険法に基づくサービス 例 訪問介護など) が代表例です。
つまりNPO法人を設立して、訪問介護や通所介護などを行えるということです。その他障害者や高齢者の福祉に関する普及啓発活動や、研究活動が挙げられます。
介護事業立ち上げに関する情報を知りたい方はこちらをご覧下さい。
【具体例】 自分の興味があり、かつ広く一般の人に役に立つとか、世の中のためになる分野の教育、研究、普及活動など。
【具体例】 商店街と連携したまちづくり活動、都市計画、町おこし、地域通貨等を使った活動、地元の観光スポットの活性化を図るといった活動を行う場合などです。
行政と連携して活動を行う場合などは最適でしょう。
【具体例】 自分の行っている音楽活動や演劇活動やスポーツ活動を世の中にもっと広めたいといったような場合に法人化して行うといったパターンが多いです。
【具体例】 地球環境の保全といった大きなテーマから、地元の環境を良くする活動(例 ゴミ拾い、リサイクル運動など)といったテーマまで、環境に関する活動を行う場合です。
【具体例】 阪神大震災のような大規模災害が発生した時の支援活動を行う場合などです。
【具体例】 犯罪や事故防止をして、住みやすい地域環境をつくるための活動を行う目的で法人化されます。
【具体例】 人権擁護運動や戦争反対活動などを行う場合。
個人としてより、NPOという法人になることによって、世の中にメッセージを発信しやすくなります。
【具体例】 国際交流活動や、在日外国人の方への支援活動などを行う場合。
ちなみに、私は留学生の就職支援を行うNPO法人の監事を勤めています。今後はこの分野のNPOは増えるのではないでしょうか。
【具体例】 職場のセクハラ問題や、男女が同じように活躍できる社会を作る活動を行う場合など。
【具体例】 子供の非行予防、更生、いじめ、ひきこもり、不登校などの子供を助ける活動や自然とのふれあいの場を提供する活動など。
【具体例】 情報処理やIT分野に関する活動を行う場合など。
【具体例】 世の中のために役に立つ分野(環境、医療など)の研究等を行う場合など。
【具体例】 経営支援、勉強会など。
起業支援も含まれ、私の設立したNPOはこの経済活動の活性化を図る活動を目的の一つにしています。
【具体例】 就職支援や職業訓練などを行う場合。
【具体例】 悪徳商法や詐欺商法などの被害に関する消費者相談、製品の品質や安全性に関する研究など。
【具体例】 NPO法人自体を資金やノウハウの面から支援するNPO法人です。
以上のような活動をする目的として、NPO法人を設立する事が可能です。
ただし、実際は自分の行いたい活動がNPO法人の活動にふさわしいかどうかが判断しづらい場合があります。自分の行いたい活動がNPO法人として行うのが可能かどうかが知りたい方はこちらをご利用下さい。
実際にNPO法人を設立するにはどういう経緯ではじめるのかについて、よくある具体例をもとに説明します。
もともとボランティアや任意団体で行ってきた活動を法人化して行う。
例えば、リサイクル活動や、ゴミ清掃や、まちづくりの活動をボランティアやサークルという任意団体でやってきたが、その活動をNPO法人として行う。
すでに会社として事業を行っているが、今回世の中のためになる活動を行いたいので、すでにある会社ではなくNPO法人を設立して世の中のためになる活動を行う。
起業する際の母体として、NPO法人を活用する。